【ハロウィン】

ハロウィンのある夜…

ヘソンはエリックの帰りを待ち疲れ、
ソファーで寝てしまった。

















































 
「痛ッ」
 
首筋の小さな痛みに目が覚め、
怪しいマスクを被った男が眼に映った。

「誰だよ！？」

「俺。
首のキスくらいじゃ俺って伝わらない？」
 
「バカエリック」
 
「Trick or treat.
お菓子をくれなきゃ、
いたずらするぞ」
 
「何？！！」
 
「ヘソンがお菓子をくれないから、血を頂く！」
 
マスクを被ったエリックが嬉しそうに、
またヘソンの首へと近づく。
 
「何やってんだよ！お前酔ってんのか？」
 
近づくエリックの胸を押し返す。
 
「ヘソン、今日はハロウィンだ！」
 
エリックは仲間内でハロウィンパーティーがあり、
仮装のままで帰宅していた。
 
「似合うだろ？バットマン」

















「チルかと思った。ってか、バットマンは血なんか吸わないぞ！」
 
「コウモリだから、吸うだろう？！」
 
「吸わないよ！どこのバットマンだよ！！」
 
エリックを睨みながら、少し尖らせた口で言う。

「俺オリジナル。ヘソンの血しか吸えないんだ…」
 
「…ったく…俺のバットマンのイメージを壊さないでくれる？」
 
「俺のって？」
 
「バットマンは俺の運命の人だから…」
 
「何だょ運命って…？？」
 
エリックはゆっくりとヘソンの隣に腰を下ろした。
 
「俺は留学中に受けたオーディションで
この世界に入っただろ？

アメリカへ留学した時、
向こうでの生活は結構辛かったんだ。

英語はあまりしゃべれないし、
友達もいないし、弟と二人
いつも師匠の道場に通っては
道場の奴らと遊んでばかり。
 
その時の俺は、
このルックスや体型、
そしてこの声も…
全て好きじゃなかったんだ。

歌うのは好きなのに、
どうしてこんな声なんだろう？って」
 
腕組をし、遠くを見つめながら話を続ける。










「そんな時、俺はハロウィンで
運命のバットマンに会った。

 お互い仮装してたから、
実際どんな奴かは分らなかったけど、

そいつは昔から知ってるような…
そんな不思議な奴だったな。」
 
「へ～。ヘソンは何に仮装してたんだ？」
 
「俺？…弟と二人でいたずら好きの天使」

















小声で言うヘソンに、エリックは顔を覗き込む。
 
「フ…ッ　　ヘソンに似合うな～」
 
「子供達の引率だったんだ！
まさか引率まで仮装するなんて思ってなくて、
衣装がソレしか残ってなかったんだよ！！

子供達と家々を回っていたら、
途中背中の羽が１つ無くなってる事に気づいて、
慌てて来た道を戻ったんだ。
 
どこを探してもなくて、そのうち道に
迷ってしまって…
 
突然無言で現れたバットマンが、
片羽を渡してくれたんだ。
 
嬉しくて、とっさにハングルでお礼を言ったら、
そいつもハングルで話かけてきたんだ。
 
道場以外でハングルを話す奴なんて居なかったから
ものすごく嬉しくて、少しの時間で意気投合
 
なかなか面白い奴で、俺の話を色々聞いてくれたよ。
 
そいつ、話してる間に俺のコンプレックスを
色々打ち砕いてくれて、
何かと心細かった俺の心を癒してくれたんだ。
 
落としたのは仮装の羽だったけど、
目には見えない心の羽を拾ってくれたというか…
そんな感じ。
 
今の俺があるのは、そいつのお陰かな。俺の初恋」
 
「初恋？」
その言葉に反応するエリック

「あ、いや…別に…」








 

目が泳ぐヘソン。
 
「そいつ男だよな？？好きになったのか？」
 
「何？エリックだって男だろ？嫉妬か？？」
 
「別に嫉妬じゃ…」
 
「大した事されたわけじゃないし…っ！？」










「ん？大してない事ならされたのヵ？」
 
「内緒っ」
 
「何だよ！そいつにキスでもされたか？」
 
「な…っ！」
 
ヘソンはエリックの目を見た。
 
「図星かよっ」
 
「ち…違うよ。俺の淡い思い出なんだから
どーでもいいだろ？昔の話なんだし！」
 
エリックから視線をそらす。










 

「俺、あのバットマンにホント感謝してるんだ。
あの時、俺の背中を押してくれなかったら、
俺はこの世界へ入ってなかったし、
こうしてエリックと会うことも無かったしな」
 
「そうだな。そのバットマンに感謝しなきゃな。
で、奴に何されたんだ？」
 
「しつこいなぁ、マジで嫉妬かよ？」
 
「嫉妬じゃない。」

エリックは両手でヘソンの両頬を包んだ。
 
「何されたか当てようか？」
 
「は？」
 
困惑しながらエリックを見つめる
 
「こんな事言われたんだよな？
【お前、もっと自信持てょ。
俺、お前の声好きだし、
もっと聞いていたい。】そして…」
 
エリっクはヘソンの頬に優しくキスをした
 
「…エリッ？…見てたの？」
 
クスっと笑うエリック。
 
「確かに見てたな。バットマンの中から…」
 
ヘソンの目が潤んでくる
 
「やっと気づいた？」
 
ヘソンの瞬きと同時に一筋の涙が流れる。
 
「お前、俺を見ても覚えてなかったろ？
ずっと言いたかったけど、
あの時の事をもぅ忘れてると思ったんだ。」
 
「忘れるわけなぃ！でもなんでエリックなんだよ！？」
 
不思議そうにみつめるヘソン。
 
「俺もアメリカに住んでただろ？
韓国チャンネルのラジオ局でバイトをしてた時、
偶然ハロウィンのイベント収録に行った先で、
俺は運命の天使を見つけたんだ。
 
男に興味持つなんて、考えた事なかったけど、
機材車の中からお前を見た時は
何て綺麗な奴なんだ！！って一目惚れだったよ。
 
慌てて外へ出たけど、
大勢の子供に紛れて見つける事ができなかったんだ。
 
ただ、俺の足元に衣装の羽が落ちてたから、
とりあえず拾ってたんだけど、
まさかお前の羽だったとはな。
 
しばらく経って、羽を捜すお前を見た時は、
まじで運命だと思ったよ。

何故か緊張して、声も出せないままに
羽を渡すとハングルでお礼を言ってきたから
ビビッタぜ」
 
「エリックはあの天使が俺だと知ってたの？」
 
「あぁ。
お前、あの時オーディション受けるって言ってただろ？
お前に会いたくて俺も受けに行ったんだ。」
 
「え？！声かけてくれたら良かったのに！」
 
「お前、オーディション中、誰とも話ししなかっただろ？」
 
「確かに…とにかく集中してたしな…」
 
「俺、ずっと近くに居たんだぜ。
まっ、俺達合格して同じグループの
メンバーになれたって事は、
やっぱり運命だな。」
 
「何だ…エリックだったのかよ。バカっ」
 
ヘソンはエリックの背中に手を回し、
胸に顔を埋めて抱きしめた。
 
「何で俺がバカなんだよ！？」
 
「もぅ会えないと思ったから…エリック、
ずっと会いたかった。
俺…初恋相手と一緒にいるなんて幸カモっ」
 
「俺はヘソンの初恋相手で嬉しいよ。覚えててくれてありがとう」
 
ヘソンは腕に力を込めた。
 
「ヘソン…く…苦しい…あっ！Trick or treat.
お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ」
 
「え？！お菓子なんか無いょ…。」
 
「お菓子が無いならヘソンでいい。」
 
「何だよ！どっちも俺にいたずらするんじゃん！！」
 
マスクの下から見える口が怪しい笑みを浮かべる。
 
「あ、確かカバンの中にキャンディがあった！
エリック、ちょっとどいて～」
 
立とうとするヘソンの腕を引っ張る。
 
「何だよ！キャンディー欲しいんだろ！！！」
 
「ヘソンがいいってばー！」
 
「俺はお菓子じゃないぞ！！！？」
 
「甘いヘソンがいい」
 
「俺は甘くな…痛ッ」
 
そんなヘソンの言葉を無視して、
エリックが首筋を噛んだ。
 
「だから噛むなって！！
いつまで吸血鬼やってんだよ！」
 
「今のは吸血鬼じゃないょ。
俺、キャンディを直ぐ噛むタイプなんだ！」
 
「噛むなょ！！俺はキャンディじゃないし、
甘くない！」
 
「じゃー噛まない。」
 
噛んだ首筋をペロっと舐める。
 
ヘソンから漏れる甘い吐息に
エリックが嬉しそうに応える。
 
「ほら、甘くなってきただろ？」
 
「バカっ。
ねぇエリッ…もうマスク取って」
 
ヘソンがエリックのマスクを脱がし、
ボサボサになった髪にそっと手を差し込む。
 
ゆっくりと甘い時間が流れる中で、
エリックは優しくヘソンを溶かした。
 
ハッピーハロウィ－ン！


おわり。
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今回もヘタな文章にお付き合い頂き
ありがとうございます。

Novel & fiction image アップは
まるっと１年ぶりです！！
久々に放置していたお話達をみていたら、
ちょうどハロウィンがあったので、
頑張って書き足し・・・完成しました。

いかがだったでしょうか～？！

イメージとして合成したバットマン、
顔の殆どが隠れているのに、
エリってわかるし、めっちゃカッコイイ！！

それに対してヘソン。
花冠と羽を付けただけなのに、
めっちゃ綺麗！！
何この二人！！

絵になる最強カップルですねー。